wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

松沢裕作『生きづらい明治社会』

昨日の電車読書の備忘。著者本人が自画自賛していたのも見たこともあって、何となく衝動買いしてしまったものhttps://www.iwanami.co.jp/book/b374925.html。松方デフレから日比谷焼き討ち事件までの主に都市下層社会の動向とそこに向けられた視線を、安丸良夫の「通俗道徳」論と、現代の「自己責任」論を行き来しながら、その「冷たさ」をあぶり出したもの。ジュニア新書という媒体もあって、現憲法と3.11以後の社会運動にある種の希望を託した形になっているが、原型になった著者の慶應義塾大学における講義への反応がどういったものかは気になるところ。その一方で比較史関連の研究会で慈善事業系の話題になったら、キリスト教イスラーム・中国における国家に比して、日本史では何も言えないのが現実で(唯一可能性があるのが入浴)、明治だけではない深刻な課題。