wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(お仕事募集中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

投稿論文リジェクト

9月23日に某学会誌に論文を投稿したのだが、全く音沙汰なし。昨日電話で尋ねたところ、本日に迷惑メールフォルダに入っていたが、枚数オーバーのため受け入れられないとの返信メール。本文23045字なので大丈夫かと思ったが、註が90あり、全体で1800字ぐらい多い。少し考えてみたが、削るのは無理で、お蔵入りにするしかない。紀要のないつらさ・・・。(追記)もう一度考え直し、最後の史料紹介部分を削って分量内に収めて再投稿し、今度は数分で受領確認メールが到着。ご縁あって新出史料の翻刻と分析を載せたのだが・・・。当方の所蔵品ではないため、所蔵機関の体制が根本的に変わらない限り、あれだけの文書が闇に埋もれてしまうのは残念だが、どうしようもない。

千野香織『「王朝美」の世界を読みほどく』

本日は千里山から組合がらみで弁護士事務所。電車読書は著者の「転向」直前に刊行された単著といくつかの論文をまとめたもの。1952年生まれの著者による1993年刊行のものだが、10世紀から13世紀の障屏画からはじまり、絵画・彫刻・細工というかなり広いジャンルを、その後の日本美術の起点として見通したもの。隣接分野からの雑な見方ではあるが、かなりレベルが高く、文献史の成果もちゃんと吸収しており、実物観察がものを言う世界で、この年齢で抜擢され書き上げるというのは相当なものだったのだろう。恐らくこの路線のままだったら、王道の学際的研究の担い手になったのだろうが、著者はさらに一歩進める道を選択した。最近手にした日本美術史にもっとも造詣の深い中世史研究者の大著でも恨み節しきりという感じで、業界からは「飼い犬に手をかまれた」扱いを受けたのも、さもありなんという印象。

「王朝美」の世界を読みほどく/千野 香織|岩波現代文庫 - 岩波書店

「わたしの知らない子どもたち」

昨日夜は上部団体の会議。18:30~20:30のZoomは性に合わないので、表題の映画を観てから組合事務所に出勤して対面で参加し、終了後はいつもの中華料理屋さん。最初は150分に戸惑ったが、主役だけではなく路上生活の戦争孤児グループ五人のそれぞれの行く末を丁寧に描くことで、ちゃんと総括ができなかった戦争を最大の犠牲者から見据えたものになっている。従来の視点をずらしたという点では監督ならではとは思うが、リアルに再現した映像はど直球で、昨今の情勢への危機感もあるのだろう。HPには主人公の名前しか記されないが、中心はあくまで子どもたちで、ダブル主演とされる二階堂ふみはある種の狂言回し。名の通った役者はそれぞれ脇役として存在感を示しているが、田中裕子が漁村の婆さんとして様になっているのは驚き。

わたしの知らない子どもたち - K2 Pictures

シンポジウム 中世地下文書論の成果と課題 ―『中世地下文書論の方法と実践』をめぐっ て―(12月12日)開催のお知らせ

転載します。当方もリプライの予定。

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【趣旨】2014年に活動を開始した中世地下文書研究会の研究成果を総括し、今後の展望
 を示した春田直紀編『中世地下文書論の方法と実践』(勉誠社)が昨年刊行された。
 本シンポジウムでは本書を中世前期・中世後期それぞれの視点から論評するととも    に、西洋中世史の専門家を招いて、日欧比較史への展望を示す。
【主催】中世地下文書研究会
【日時】2026年12月12日(土)13:30~17:30
【場所】立教大学池袋キャンパス(東京都豊島区西池袋3-34-1、JR池袋駅西口より徒歩7 分)14号館5階D501教室https://www.rikkyo.ac.jp/access/ikebukuro/ 
【プログラム】
 受付開始:13:00
 趣旨説明:13:30~13:35春田直紀(熊本大学) 
 報告:13:35~15:35永野弘明(相愛大学)「中世前期研究からみて」 
          久留島典子(総合研究大学院大学)「中世後期研究からみて」 
          菊地重仁(東京大学)「西洋中世史からみて」 
 リプライと討論:15:50~17:30
【備考】事前申し込み不要、参加費無料
【お問い合わせ】佐藤雄基 (e-mail:yuki-s*rikkyo.ac.jp) *を@に変換のこと
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岡崎勝世『世界史の日本史』

本日は枚方3コマ。昨日のカバンからのど飴を移し替えるのを忘れてしまったが、何とか無事終える。電車読書は本日の担当科目のこともあって購入していたもの。主に中等教育で用いられた世界史教科書について、1872~86年をアメリカのキリスト教的世界史(普遍史)に影響を受けた普遍史型万国史、1886~92年を西欧の啓蒙主義的世界史教科書の影響による文明史型万国史、1902~45年を官学アカデミズムの担い手による日東西の三分体制の時代とした上で、日清戦争勝利により日本をアジアの盟主との位置づけがなされ、大東亜共栄圏が意識されるようになると西洋史部分が縮小されるという。1945~70年が「世界史の基本法則」に接近した戦後歴史学型世界史、1970~99年を文化圏型世界史、99年以降を「地域」型世界史と位置づける。特に明治維新からの外国語文献の圧倒的影響下から、官学アカデミズム、その一方で帝国意識という変化が世界史の内容に如実に反映している点は興味深いところ。著者は1943年生まれで(名前に反映)、戦後歴史学的教育を受けながら、大学院時代に非常勤講師として文化圏型世界史に直面したことが「世界史」にこだわることになったとのことで、西欧における世界史の成立と展開を研究し、大学を退官したことで専門外の日本における世界史教育の展開を扱ったとのこと。史学史全体は永原慶二依存のところがあり、戦前の西欧史独自の動きはもう少し知りたかったところではある。

『世界史の日本史』(岡崎 勝世)|講談社

明石市立文化博物館「秀吉と明石‐戦場と物語‐」

本日、自治体史の会議ついでに観覧。三木合戦期の魚住城跡・寺院の被害・村上水軍関連、中川家文書6点、戦国期に明石氏と姻戚関係があったという明石藩家老黒田家および地元に残された記録類、絵本太閤記とその出版事情、明治23年に黒田侯爵家を会長として組織された豊国会にかかわるものなど盛りだくさん。図録も刊行され、論説「毛利・織田戦争における毛利方の海上支援について」・「語られる秀吉と『絵本太閤記』」ほか、コラムも多数。

展覧会・イベント 詳細 | 明石市立文化博物館

武田晴人『仕事と日本人新版』

本日は午前のシニアから午後の組合事務所。まだあると思っていたタックシールが足らず、明日中に買い足す必要が・・・。電車読書のほうは初版(2008年)をすっかり見逃していて(このころがもっとも貧乏だった・・・)、文庫新版を購入していたもの。「近代的な」労働観につきまとう「不自由さ」を歴史的に探求したもの。まず近代の造語である「労働」そのものに「骨折ってはたらく」という忌避される意味を有しており、速水融の「勤勉革命論」も近世社会では他人に強制されるものではなく、「労働の主人」は「自分自身」であることに特徴があるとされる。その上で近代日本における「工場」の成立と職人の地位低下、時間管理、残業などの変遷をたどり、戦前における労働組合の弱さと戦後の時短よりも賃上げ偏重の動向、さらに新自由主義によりどれだけ稼いだかで人の価値をはかる社会になったという。そして再び仕事の「主人」になる方向が展望される。帝大卒と私大卒の賃金格差などさまざまな統計データもあり、興味深いもの。専任の経験ゼロの上に、賃金といえない組合専従、さらに独り身としては、「仕事」とは、家事労働も含めその時にやらなければならないもの。