wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

瑞浪市柿振興会『富有柿発祥の地瑞浪市』

本日はルーティン姫路、いつもながら午後はヘロヘロだが何とか終える。電車読書はとある関係者からの頂き物で、ネットで少し検索しても全く情報が確認できない出版物。明治期に医師を志すも病で断念した福嶌才治が地元で柿の品種改良によって生み出した富有柿の歴史と、後継者不足に苦しむ現在の生産者の思いと地域の取り組みについて紹介したもの。福嶌をはじめとする人々の創意工夫、戦時中の果樹伐採政策、高度成長期の躍進とその後の停滞、戦後三大開拓地の一つという宮崎県川南町から嫁ぎ娘5歳と2歳で夫を亡くした後に柿農家として生きてきた女性の思いなど、いろいろ触れることができ勉強になる。この種の書物には珍しく全て西暦表記なのも好感がもてるところ。

中野耕太郎『20世紀アメリカの夢』

本日は枚方3コマ。先週が休みだったこともあり最後はヘロヘロになったが、何とか終える。電車読書のほうはシリーズアメリカ合衆国史の三冊目で、1901年から72年までを扱ったもの。1932年のフーバーまでで半分強の分量となり、この部分は共和党民主党の性格、さまざまな社会運動、第一次大戦期の動向など、いろいろ知るところが多く勉強になった。ただ残り半分弱で72年まで論述するのは、世界への関わり方と比重が異なりすぎ余りにも無茶で、外交・内政・社会運動何れも中途半端な印象を受けざるをえない。ただ最後に20世紀初頭の革新主義がどのように展開したのという視点で全体が6点にわたってまとめられており、一書としての体裁は整えられている。

20世紀アメリカの夢: 世紀転換期から1970年代 (岩波新書 新赤版 1772 シリーズアメリカ合衆国史 3)

大和文華館「聖域の美ー中世寺社境内の風景ー」

本日は組合執行委員会、金曜日の職場といい組織はいろいろ疲れる…。ただ出かけるついでにたまたま見つけた表題の展覧会を観覧。高野山・日吉・園城寺などを描いた作品が並び見応えがある。不勉強で全く知らなかったが、14世紀に醍醐寺周辺で作成されたという「伊勢曼荼羅」、展示期間ではなかったが図録に掲載されている神功皇后説話が描かれた建徳三年の筑後「玉垂宮縁起」(菊池?)、秀吉の対外政策が反映されているようにみえる「吉野花見図屏風」など、教えられるところも多かった。図録も大判で、解説も充実しており掘り出し物。

https://www.kintetsu-g-hd.co.jp/culture/yamato/exhibition/seiikinobi.

遠藤ケイ『鉄に聴け鍛冶屋列伝』

あわせて電車読書の備忘。この間の関心から衝動買いしていたもの。新潟三条の町工場に生まれ鍛冶屋に憧れをもっていたものの、故郷を離れ絵を学び民俗学ルポライターになったという著者が、30歳を過ぎてから鍛冶修行をはじめるとともに、全国各地の職人を訪ね歩き俄に弟子修行をした体験ルポ。紹介されている事例は興味深いのだが、人物が異なるだけで同じような比喩がならぶのが難点。もともと『ナイフマガジン』なる雑誌に91年から97年に連載されたためのようで、今回はじめて単行本化され「大幅に加筆改稿」したというがどうかというところ。さらによりルポとして問題なのは、取材した時期が全く記されておらず、資料としての性格を損ねているのが残念。なお直接関係ないがこういうルポが趣味雑誌、しかも初出にあったかどうかは不明だがナイフ業界をかなり批判しているにも関わらず掲載されたところに、90年代のある種の余裕が感じられる。鉄に聴け 鍛冶屋列伝 (ちくま文庫)

 

途中下車博物館ツアー

さてもともと東京行きは10月末に予定していたのだが、仕事の関係で一週間延ばすことになり、東京にとっていた宿もキャンセル。その際には東大史料に寄るつもりだったのだが、11月からの閲覧方法がなかなか開示されなかったため(結局は前日予約でOKになった…)、方針を変えて博物館ツアーに変更。宿も横浜に変更し(安くて大浴場・朝食付でなかなかよかった)、水曜日の映画鑑賞後に移動して途中下車。

本日は朝9:00から金沢文庫聖徳太子信仰ー鎌倉仏教の基層と尾道浄土寺の名宝」を観覧。東国を中心に太子信仰と律宗の展開が示され、四天王寺に関わるものもあり勉強になった。国宝だという称名寺蔵「結界唱和」は律宗寺院の指図としても非常に重要に見えたが、全貌が知りたいところ。また浄土寺の史料も興味深く、鎌倉末だけでなく南北朝期にも優品が続くのは全く不勉強。なかでも圧巻なのは「弘法太子絵伝」で材木伐採・切り出し場面、山斜面の畠と紙漉きなど、貴重な画像がてんこ盛り。こちらは図録で大きく紹介されておりありがたいところ。https://www.planet.pref.kanagawa.jp/city/bunko/tenji.html

続いて横浜に戻り【特別展】時宗二祖上人(にそしょうにん)七百年御遠忌(ごおんき)記念 真教と時衆 | 神奈川県立歴史博物館 を観覧。こちらは清浄光寺など東国を中心とした時衆の展覧会。多数ある遊行上人絵伝が紹介されていたのは圧巻だったが、図録に掲載されているのはごくわずかで、展示されていた伊勢参宮前の尼僧の沐浴シーンも省略されていた。これまた不勉強で同絵巻の全巻揃いを観たことがないのだが、これまた何とかならないものか。聖徳太子弘法大師親鸞などもそうだが、多数の作品があり微妙に描写が異なっているため、ちゃんと比較できるようにしてほしいところ。

さらに新横浜まで移動して米原で途中下車し、ICカード長浜城歴史博物館に向かい「企画展塩津」を観覧。夏に安土に行けず見逃していた12世紀の起請木札をおがむため。安土より規模は小さいようだが(おかげで図録は安価)、お目当てのものは全て出されており、いろいろ想像をめぐらすところ。それにしても他は痕跡のみにもかかわらず、どうして一点だけ墨書がちゃんと残っていたのだろうか。使用状況だけで説明できるのだろうか。ただどちらにしろこちらが当初想定していた地名二文字はどうも記されていないようだ。https://www.city.nagahama.lg.jp/section/rekihaku/

長浜からは米原までだけ切符を購入し直通新快速で大阪まで帰宅。もともと姫路ー東京の往復乗車券のため明日はそれを利用して通勤。図録代三冊ぐらいは浮かせることができた。

「少女は夜明けに夢をみる」

大浴場でさっぱりしたので、ハイボールを飲みながら晩の備忘もあげておく。このところ東京の史料調査は神田で時間を潰し岩波ホールが定番になっており、今回も表題の映画を鑑賞。イランの少女刑務所を題材にしたドキュメンタリーという超レアもの。最初から超パウダースノーの雪遊びという意外な展開から入り、赤裸々なトークが繰り広げられるが、内容は虐待・薬物などつらくなる話ばかり。むしろ国内公開が不許可だとしてもなぜこの取材が許されたかすらという内容で、日本の刑務所もおそらく許可はしないだろう。しかも還るところは家族しかないという悲惨さで、少年法がなくなれば日本も完全にそうなるのだろう。もっとも上映後のトークショーで当方も名前だけは知っていた虐待の専門家は、赤裸々トークすらできないほど抑圧されているのが日本の現状で、法体系は家族一択と述べていたので、さほど変わらずというところか。なおトークショーは司会が映画の補足をしていたのでためにはなったのだが、あまりにもイランから日本に引き戻された感はある。http://www.syoujyo-yoake.com/

両国

代休などで水木と連休ができたので懸案になっていた東京刀剣博物館で史料調査。対応は事務的で悪くなかったが、事前に三冊だけしか指定できないので結局進展なし。とりあえず蔵書目録を手に入れたのでもう一度ぐらいはチャレンジしてみないといけないがなかなかこちらの思うようなものは見当たらない可能性が大。ちょうど特別展「日本刀の見方パートⅡ地鉄」が開催されていたが、刀剣書の関心も古くから刃文が中心で、素材鉄の産地に関心をもつものはほとんどないようだ。https://www.touken.or.jp/museum/

時間が早かったのでついでに江戸東京博物館も学部生以来に観覧。写真撮影OKなので講義用のライフサイクル・公害などの画像を手に入れる。掘り出し物だったのが企画展「18世紀ソウルの日常」。両班の記した日記も興味深いが、手継売券がまるまるあり、しかも公文書に近くなると楷書・私文書ぽいのは崩し字と使い分けされており、漢字文化圏としての近さを実感することができる。

18世紀ソウルの日常-ユマンジュ日記の世界 - 江戸東京博物館