wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

熊倉潤『新疆ウイグル自治区』

本日は岡本で専門2限(なぜか日本史専攻がほぼいない)・教養4限。空き時間に図書館で読んだものもあるが、それは略して電車読書の備忘。漢時代の西域からチュルク化・イスラーム化し、東トルキスタンと呼ばれる地域が清に併合されてからの通史。ロシア革命で民族共和国が成立したことで当該地でも民族概念が広まる一方、蒋介石スターリンの駆け引き、東トルキスタン共和国の成立と1949年8月に中国共産党主催の政治協商会議に向かう飛行機が墜落し首脳全員が犠牲となった後に、中国共産党統治が開始。旧国民党協力者・共産党少数民族エリート・漢人による新疆生産建設兵団などの動き、ソ連の影響を受けた一部の民族共和国構想が新疆ウイグル自治区になる過程の確執。中ソ対立・文化大革命の影響、毛沢東に信任されていた現地出身のセイフディンの解任で党幹部が漢人となった改革開放期の資源開発。ソ連解体で中央アジアに独立共和国が形成されたことによる影響と、現地の強権政策から発生した「テロ」事件。9.11により「東トルキスタンイスラーム運動」がアメリカから「テロ組織」に認定され、それをお墨付きとした弾圧と大規模開発の進行。習近平(父仲勲は初期に当地で穏健派幹部とされた存在)による反テロ人民戦争と大規模収容施設による強制的「中華民族」への組み込み。欧米の「ジェノサイド」との批判に対して、著者は20世紀的な集団の破壊とはいえないが、「民族の改造」という21世紀的なおぞましい体制と捉える。全体的な流れがよくわかる一方で、どこかで今と異なった道があり得たのだろうか。著者は現地共産党トップの地位にセイフディンがあった時期にわずかに見出しているよう。それにしてもあとがきで研究に協力した現地人の名前すら挙げることが避けられるのが現状で、あまりにも悲惨。

新疆ウイグル自治区 -熊倉潤 著|新書|中央公論新社