wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

酒井紀美『夢の日本史』

本日は勤務日ではないのだが業務出張。ただし姫路より遠方とはいえ、自宅を出たのは90分遅く地下鉄は当然座れないこともあり、読みさしだった表題書を読了http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=100750。著者は著名な日本中世史研究者であるため、カテゴリーとしては日本中世の枠に入れたが、以前の『夢語り・夢説きの中世』・『夢から探る中世』といった著書と異なり、通史として夢を主題としたもの。大学の教養課程の講義がもととなっているためか、はじめに・14のテーマ・おわりにとの構成で、テーマ8以降は近世・近代を主題としたもの。むしろ中世的なあの世からのメッセージとしての夢から、世俗化し合理的に解釈されるようになる・もしくは赤の他人が購入することが可能になるという近世における大きな変化の指摘が印象的で、神仏のメッセージとして睡眠時にみる中世の「夢語り共同体」が、覚醒時に将来を語り合う「夢語り」という近代以降への変化も鮮やかに示されている。また夏目漱石柳田国男岡倉天心を取り上げた近代編は、時代に抗する近代的自我を持つ主体による、前近代的な夢への論究という思想史的な探求もにもなっており、著者の射程の幅広さが、分かりやすい文章で味わうことができ、やはりさすがというところ。
*著書名が抜けていましたので、追加しました。