wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(お仕事募集中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

広中一成『七三一部隊の日中戦争』

月曜からかつて治療した歯が痛み出し、祖谷以来の鼻水も断続的ななか、本日の枚方出勤で読了。731部隊については人体事件関係に関心が集中しているが、本書は支那派遣軍によって実戦使用された概要を紹介したもの。もともと対ソ戦を想定して開発が進められた細菌兵器だが、40年の南進政策で手薄になった中国戦線を補うものとして井本熊雄参謀によって実戦使用され、井本は参謀本部作戦課でも全体を統括したキー・パーソン。一方その実態は、手順が悪く日本兵に死傷者を出した例もあり、中国側も八路軍を含めて、封鎖などの対策がとられたという。またビルマ撤退戦でも使用される一方で、対米戦は計画はされるも中止、本土決戦でも準備が行われたという。戦後の隠蔽工作による消滅、防衛省の非公開史料の壁、中国共産党の戦犯になった日本人証言の迎合性など、史料状況の現状も示され、全体的に有益。たまたま来年度から担当科目が変わることになり、それに向けても利用できそう。

七三一部隊の日中戦争 | 広中 一成著 | 書籍 | PHP研究所