wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

及川琢英『関東軍‐満洲支配への独走と崩壊』

火曜日の試験まで出かける予定がないため、昨日の電車読書の読み残しも片付けておく。日露戦争でえた満蒙権益に関して、当初の駐屯部隊から1919年に誕生した関東軍について、45年のソ連軍への降伏までの通史を描いたもの。軍司令官が陸軍三長官と同格の天皇直隷だったため、政府や軍中央をなおざりにして動くことが可能な制度設計をもち、陸軍そのものが政府方針に反する謀略に関与していたため、出先への説得力をもたなかった状況について、1920年代の軍閥の複雑な動きとともに整理されており勉強になる。また軍司令官は陸大エリートの作戦参謀をの謀略を決済するだけだったが、梅津美治郎のみが毛色を異にしていたため、関特演の際の対ソ作戦が出先の暴走で実行される条件がなかったというのも興味深い。ただ満蒙に関する地図が少なく、とりわけ内モンゴル工作について理解しにくかったのは残念。

関東軍―満洲支配への独走と崩壊 -及川琢英 著|新書|中央公論新社