wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

吉見義明『買春する帝国ー日本軍「慰安婦」問題の基底』

本日は新居の書庫設置の件で打ち合わせ。28日の管理組合で了承が得られれば閉架式、得られなければ壁打ちつけで段取り。何とか前者が通ればよいのだが…。そういうわけでようやく読了した電車読書の備忘。

 

 

刊行前から期待していたシリーズ日本の中の世界史の一冊。ただ外務省警察史など政府側史料をもとに維新から1954年の売春防止法までを実証的・通史的に叙述したもので、からゆきさん・女衒などの国際ネットワークについては予想していたほどの叙述は含まれていなかった。第一次大戦後の欧米の政策転換をうけて東南アジア・香港では廃娼がすすむ一方で、中国本土・満洲では存娼につとめたとのこと。この時に存在していたネットワークこそが以後の状況を考える上で不可欠だと思われるが、当事者側の史料がほぼ残されていない分野だけに、やはり研究は困難なようだ。その一方で通史として示されたことで、維新後の北海道開拓以来、移民と軍隊には遊郭が不可欠という観念が一貫して存在しており、第一次大戦後に国際的動向を受けての廃娼運動があったにしろ、日中戦争以後の軍慰安所の拡大もある種の必然の成り行きだったことが明確に(もちろん著者は公娼制と軍慰安婦制度は区別)。なお国際法的には1934年発効の成年女性取引禁止条約に対して、政府内にもあった過去の同様の条約にあった植民地除外宣言撤回を、最終的に署名すら見送ったことが、以後の慰安婦送出の前提条件になったとのこと。それにしてもこの開発と遊郭という発想は近世の新地に直接つながるものだが、どこまで遡る発想なのだろうか。戦国の町立て法令にはそういった条項はなかったように思うのだが、前近代史としては大きな課題だろう。昨日ようやく成績処理を終え「夏休み」。姫路週二は変わらず、家がらみの雑用も多いが、春から働いていない頭を何とかして9月末締切の原稿ぐらいはちゃんとしたものにしたいところ…。