wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

大河内直彦『チェンジング・ブルー』

本日は地下鉄はガラガラにもかかわらず、奈良方面への電車は混んでおりGW期間中であることが実感される。2限受講者が半減していたのは少し驚いたのだが何とか終えて、帰路は高校陸上部の夏合宿以来のルートを辿り病院へ。一時恐れた最悪の結果は免れたらしくとりあえず一安心。そうはいっても決断の時は迫っているが・・・。そんななか読了したのは二月に書店で衝動買いしてしまった表題書https://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0062440/top.html。1966年生まれ。現在は独立行政法人海洋研究開発機構生物地球科学研究分野・分野長の地位にある著者が2008年に出版した同名書の岩波現代文庫版。その時点までのマクロレベルでの地球環境変動に関する科学者の見方の変遷を、科学者の個性を描きながら跡づけたもの。過去半世紀の間に天文学的な要素が、過去の氷期間氷期といった気候状態を生み出す重要な要因であること、気候変動が数十年という非常に短いスケールでも起こりうること、というパラダイム・シフトを経て現代の認識に到達しているという。日本中世史分野でも1970年代から気候変動のデータを取り入れようとする研究が進められてきたが、この分野そのものの研究の内実と発展が明確に示され指針となる。また氷期間氷期のメカニズムを初めて明らかにしたのがベオグラード大学教授(発表言語はドイツ語)が1941年に出版した著作で、彼の死の直前である1955年にアメリカでその理論を支持する論文が発表されたこと。C14半減期など重要な研究がマンハッタン計画に動員された科学者の手によるものなど歴史的背景を考えるのも興味深い。解説にも記されるが、第一線の研究を続けながらこのような読ませる書物を書ける理系研究者は珍しいのではないか。同世代の著者と比較すると忸怩たるものがあるが、何とか後世に評価される論文を書きたいもの。