wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

J.ロックストローム・M.クルム『小さな地球の大きな世界』

本日は公務出張で関西館。ようやく刀剣界の全体像は何となくみえてきたが、問題は未公刊刀剣書、内容は何となく想像できるのだがやはり未見なのは怖い…。そんな中で某式典で久しぶりにお目にかかった先輩研究者のおすすめで購入した表題書を読了https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b302784.html。著者はスウェーデン出身の副題にもある「プラネタリー・バウンダリー」概念を主導する科学者と写真家で、地球環境が人類の生存にもたらしている危機と持続可能な開発への転換が不可欠なことを、説得的なデータとわかりやすい筆致で記したもの。とりわけ極地の氷が融解すると、地球への冷却システムから加熱システムへと逆転し予想不可能な気候変動が訪れるという主張はきわめて説得的かつ深刻。本年の台風などはまさにその先取りともいえる現象で、喫緊の課題になっていることは疑いえないところ。世界的には一部多国籍企業・ドイツ・中国などが急速な転換をはかっているようにみえるが、アメリカはトランプ政権になり、日本政府は明後日の方向を向いている。またビジネス・チャンスという動機はモチベーションとしては大きな効果はあるのだろうが、それがまた世界秩序をどう変化させていくかはまた別問題。明らかにこの1万年の気温の安定はある種「異常」な状況ともいえ、これから先は科学の発達も含め全く別のステージに転換することになるのだろう。特に目立つようになった破滅を前提とした日本政府の諸政策は論外の一方で、歴史学の果たす役割がどこにあるのかも改めて突きつけられているように感じる。