黒﨑真『マーティン・ルーサー・キング』

本日は千里山、講義はケガレと神国意識、史料講読は輪読が開始。後者は三年目にして初回受講者がほとんど減らず、例年の倍以上の人数、今回の状況で次回からどうなることか…。電車読書のほうは木・金・土の姫路行きでほとんど寝ていたこともあって、ようやく秋の講義のこともあって衝動買いした表題書を読了https://www.iwanami.co.jp/book/b352597.html。もともとアメリカ現代史については全く無知だったため、ウィシャルオーバーカム、ディープサウスのもともとの意味、背景となった牧師としての活動からくる宗教性と演説、陪審員裁判で白人による黒人のリンチ殺人が全て無罪になる州法の独立性、そのなかで戦略的に選ばれた非暴力という方法、かの著名な「夢」演説が本来の予定原稿終了後にアドリブで加えられたこと、南部の法的隔離に対して北部の経済的隔離という実態、65年以後の経済正義・貧困問題克服に関する運動とベトナム反戦活動への関与をめぐる苦闘（公的な評価では「夢」演説以後は黙殺）、FBIによる「共産主義の同調者」としての監視活動、「貧困との戦い」政策に終止符を打つことになったニクソン政権のアファーマティブ・アクションの評価など、社会状況を多面的に描きながらキング自身の人間的葛藤も取り上げられており、大変勉強になった。当方も「夢」演説による偶像化の影響を受けており、そこから解き放たれたことは有益。