wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

宮野裕『「ロシア」は、いかにして生まれたか』

本日は千里山定期試験2コマ。コロナ明けでどうなるかと思ったが、配置された学舎の関係もあり、受講者は少なく、明日一日で採点は終わる見込み。電車読書は秋の講義に向けて衝動買いしていた表題書を読了。ルーシ諸国家がモンゴルの侵攻により、副題にもなっている「タタールのくびき」といわれる徴税による間接支配を受け、破壊が軽微だったモスクワがカンの力を利用して成長、オスマンの侵攻に苦しむビザンツ教会がカトリックとの合同を宣伝したことでルーシの主教が分離、リトアニアローマ教皇のもとへ分離したため、唯一の世俗権力である大公権力に主教が従属、カンのくびきからも離脱したことで「全ルーシ」から「全ロシア」となり、分割相続で貴族が弱体化したこともあり教会を保護した専制的君主権が増大、カトリックとなったリトアニアとの戦争でその支配下にある正教圏は「全ルーシ」としての一体性を有し、それがロシアの父祖の地であるとという観念が成立し、それがプーチンの戦争にもつながっているという。13~16世紀の「ロシア」史という全く無知な部分でいろいろ勉強になった。ただ説明に関わる大判の地図がモンゴル以前しかなく、ジョチ・ウルス以後のモンゴル権力との関係が視覚的にわかりにくかったのは残念。

世界史のリテラシー 「ロシア」は、いかにして生まれたか タタールのくびき | NHK出版