wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

京都市歴史資料館『久多荘文書』

本日は、先週土曜出勤の振替休日。やることは山積みなのだが、気分転換に京都に出かけ、表題書を購入http://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000236377.html。久多荘関係史料のうち、岡田家文書・東本家文書・久多自治会振興会所蔵文書1977点のうち、中世分を中心に343点を翻刻したもの(巻末には全ての文書の目録が掲載)。値段も2000円と超お手頃、またあわせて特別展「久多荘 中世村落のすがた」で一部文書の現物・花祭り関係史料が展示されており、2010年撮影の正月から盂蘭盆の花笠祭りまでを描いた40分のビデオもみることができる。以下、若干気づいたことについて、①岡田家文書については以前に資料館で閲覧していたが、原本が発見されなかったものが早い時期を中心に少しあり、逆に写真がなくて原本があり今回紹介されたものもある。②久多自治会振興会所蔵文書(もとは志古淵神社文書)はほぼ新出で、鎌倉期の田数目録など興味深いものも存在。③巻末に花押・印章・影印一覧があり有益、ただし薗部論文は参照されておらず、木印という呼称は用いられていない、④平安期の公文職補任状は偽文書とされるが(一部展示されているものは紙が明らかに新しい)、貞治四年十二月十四日付の室町幕府奉行人奉書らしきものが記された木札6点は正本と評価されている。しかし奉行人の実名が確認できず、~代実名という表現からもより降った形式だと考えられ、葛川などとの堺相論で偽作されたものと思われる。⑤展示されている原本は全くのウブのものと裏打が施されているものがある。以前確認した写真では確認できなかったもので、いつのものか気になるところ、なお刊本にタテヨコの寸法が記されていなかったのは残念。いろいろケチはつけましたが、短期間にこれだけの史料集を刊行されたことには敬意を表します。