wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

「中世畿内における材木流通の展開」

仁木宏編『日本古代・中世都市論』(吉川弘文館、2016年5月10日奥付)108~136頁に掲載され、本日手元に到着。出版社のHPhttp://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b219810.html・担当者のメールによると刊行は4月25日で、献本の発送も同日とのこと。2009年2月に前年に阿蘇で名刺交換したきのこ・里山研究者の要請で、生態学・森林学などの研究者の前で「中世畿内周辺の木材・薪炭資源と流通」という報告をする機会を与えられた。すでに京都研究における山林資源の重要性は認識しており、大阪湾岸都市に関しても材木関係の史料はそれなりに目にしていたが、集中的にこの問題を考えたのはこれが初めてだった。報告が異分野の方々にどれだけ役に立ったのかは心許ないが、色々な問題をつなげて考えることができ、その後も折に触れて史料を集めてきた。ちょうど論文集の話が持ち上がっており、当時中心的テーマにしていた畿内都市研究の総括的な意味を含めて執筆し、2011年3月締切に対して同月初旬に送信した。奇しくもその直後に3.11を迎え、岩手県地域が江戸・東京への薪炭を含めた山林資源の大供給地で、1960年代にそれが崩壊して人口がリアス式海岸に移動し養殖漁業にシフトしたことや、プロパンガスの普及と里山の放棄、水力・原子力発電など、エネルギー問題を歴史的スパンで考えなければならないと感じるようになった。その中で都市の突発的材木需要と山論の勃発、山林伐採による洪水・大規模な平野形成などの起点として同論文を位置づけていた。しかし思うようにはならないもので、執筆予定者の病気、関係者の多忙化、出版社の変更などで事業は動き出しては止まることを繰り返し、もともと総括論文で取り下げて投稿論文にすることもできないままズルズルと時間だけを費やすことになった。さらに執筆当初の研究意欲も、仕事の減少とともに減退し、集めたネタもほとんど論文化できず今に至っている。今更詮無いことだが、一応経過だけは書き残しておく。なおこの間にいくつかの研究が刊行されているが、単に史料を並べただけではなく、13世紀から15世紀にいたる歴史的過程に位置づけた研究としての意義は今も損なわれていないと自負しているが、その点は読者の判断に委ねたい。なおGWまでには『枚方市史年報』所収論文とともに、関係者にはお送りしたいと思います。最後に中世の山林資源をめぐる諸問題については、出していないネタも含めて一書にまとめたいと考えています。ご興味をお持ちという奇特な出版関係者の方がいらっしゃいましたら、是非ともご連絡ください。