wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

京都博物館二題

今年度は基本的には木曜日が「無給研究日」。昨年度よりは少しは経済的余裕ができたことと、3月に中止になった予定のため3dayチケットも購入してしまっていたこともあり、京都へ春の特展見学へ出かける。まず京阪七条から京都国立博物館「禅ー心をかたちに」http://www.kyohaku.go.jp/jp/special/index.htmlへ。雨だったこともあり外国人観光客はそこそこ多かったが、わりとゆっくり熟覧することができた。館内アナウンスでは座禅体験が宣伝されどうかと思ったが、モノ自体はさすがに中国宋代から始まり主な高僧の像はほとんど網羅され、墨跡と合わせてわりとオーソドックスな並び。ただ1Fの端にあるためか武田信虎三好長慶など戦国武将像が並ぶ部屋がもっとも空いており、賛もない北条氏綱像や豊臣棄丸関連などは、展示の目的からはややズレているような気がした。とはいえ関ヶ原後に九鬼守隆の要望で賛が書かれた豊臣秀吉豊国大明神)象や、関ヶ原直前に描かれ高知秦神社に伝来したという長宗我部元親像などは転換期の諸相がうかがわれ興味深いところ。また須磨の禅昌寺に宋代の一切経があり家康によって南禅寺に移されたという。地名辞典によると応永に博多津の住人が施入したようで兵庫との関係も含めて気になるところ。その一方で近世の禅宗の遊びぶりには驚かされる。禅問答自体が相対化の回路を持っていたためだろうが、今に続く「冷笑系」という感じが伝わるもの。続いてバスで京都駅に向かい乗り換えて西本願寺前で下車、龍谷ミュージアム「水ー神秘のかたち」へhttp://museum.ryukoku.ac.jp/exhibition/sp.html。こちらも入り口の傘立てはガラガラだったが、中に入ると中学生が走り回っているという惨状。ちゃんと説明するならともかく自由見学を受け入れるのはいただけない。モノそのものは興味深く信貴形水瓶なる存在は初めて知ったし、鎌倉期の神泉苑の図を観られたのもよかったし、「法隆寺花山龍池縁起」には「津河枯竭、鯖失命」という表現も興味深かった(当方の誤読?)。ただ鶴岡八幡宮蔵の14世紀の住吉神像はかなり大ぶりでものは興味深かったが、水神として祀られていたのかはかなり疑問。また東京国立博物館蔵「祈雨法日記」の巻物裏に作事に関する興味深い紙背文書を見つけたが、一部分しか判読できずネットにも上がっていなかった。課題は多いが、ともかく眼福々々。