その元所属ということで、招待券をいただいていたこともあって、足を伸ばして観覧。題材は中世だが、成立は近世なので、中世史研究の立場からすると、実像というよりイメージの世界。ただ興味深かったのが、とある「平治物語絵巻」の堀川の場面に、板材が積み上げられた光景が描かれていたことで、何らかの中世絵巻を借用したと思われる。なお松平定信は、竹沢養渓という絵師に、中世絵巻をもとにした「平家物語絵巻」を制作させたとのこと。残されているのは下絵のみで、清書本は不明らしいが、「石山寺縁起」「春日権現縁起絵」などをモデルとした厳島大塔建立場面など、何ともシュールな図柄。中世に関しては寄託コレクションから「前九年」「後三年」の模本も並ぶ。なおこの分野には全く疎いが、図録収載の前田徹「合戦図の魅力」は、研究史が簡潔に整理されており、大変勉強になった。
「いくさ物語の絵画―瀬戸内の名品と収蔵コレクション―」 | 展示会情報 | 兵庫県立歴史博物館:兵庫県教育委員会