wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

渡辺尚志『江戸・明治百姓たちの山争い裁判』

本日から枚方対面。まず出鼻をくじかれたのがJRの回数券廃止、週一姫路以外は遠ざかっており、電光掲示板で9月30日で廃止を見かけたが、何が廃止されるかはわからないまま迎えてしまった。一月に何度も乗れば割引になるようだが、週一で別のところに通っている身としては何のメリットもなく、非常勤いじめしか能のない会社。その上に久しぶりの配信でミスが重なり、100分3コマで喉もボロボロ。帰りのバスは渋滞で全く進まず、踏んだり蹴ったりの日に。その上に昨日リモートの評点もまだなのだが、タイトルに惹かれて衝動買いしていた電車読書の備忘を片付けておく。江戸時代の山と村についての基礎的な紹介、中世以来の山論の歴史を概観した上で、信濃における松代藩領の村と幕領の村で展開した山論、出羽国村山郡山口村での内部の組同士の江戸勘定奉行所での山論と、明治地租改正で官有林に組み込まれた地についての隣村田麦野村との山論について紹介。全体として近世の訴訟の仕組み、藩、村名主クラスの動向が手際よく説明され、地租改正が過去に売買事実がないものを官有林に強引に編集したことで、曖昧な入会関係に白黒つけざるを得なくなった状況も興味深い。ただ村個別の生業に踏み込むというより、全体構造を概観した点に若干の不満は残った。なお「先人たちの膨大な努力で林野が守られてきた」ことが強調されるが、土壌が崩壊し岩盤化しない限り豊富な降水量と日照により再生できたという条件に恵まれたためで、他地域で人々が努力しなかったから林野が守られなかったような書き方は疑問。

【文庫】江戸・明治 百姓たちの山争い裁判 | 草思社