wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

木宮正史『日韓関係史』

本日は調査出張予定を雨で延期することにして、姫路出勤。予想以上にヘロヘロだったが、衝動買いしていた読みさしの表題書を読了。冷戦期の経済力の圧倒的な格差という非対称的かつ米陣営の一員としての相互補完的な関係が、冷戦の終焉と韓国の経済成長で対称的な関係が到来し、2010年以降は対称的で相互競争的な関係に至ったとするもの。近年の政治学の特徴的な方法なのだろうが、あるものをそのままニュートラルな存在として捉え、その力学的変容(いわゆるゲーム理論)によって分析し、最後に対中・対北朝鮮での共通の利益を指摘することで、「善意の競争」を求めている。全体構図としてはわからないわけではないが、方法的には大きな疑問。国際的な立ち位置としては韓国のほうが大きく変化してきているため、それを日本の保守政権は好ましく思わないので、問題が突きつけられるという構図に終始してしまう。小林よしのりからはじまる嫌韓には一切触れられず、「歴史戦」も注釈なく用いられ、世論の現状がそのまま提示。途中で西側の価値観なるものにも言及されるが、立場の相違が列挙されるだけでそれを止揚した「公正」が追求されることもない。はたして損得を説くだけで現状が打開できるのだろうか。そんなことは思って書いていないと言われればそれまでだが、恩師だとする坂本義和氏からは随分遠くなったように思える・・・。

日韓関係史 - 岩波書店