wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

金澤周作『チャリティーの帝国』

本日は千里山でワクチン接種。副作用は少しもやっとした感覚と左手にやや違和感といった程度。15分間の経過観察もあって読みさしの表題書を読了。「困っている人に何かしたい」「困っているときに何かをしてもらえたら嬉しい」「自分の事ではなくとも困っている人が助けられている光景には心が和む」という三つのモティーフの内実の展開について、世界史における他者救済を前史として、17世紀から19世紀の市民社会と下層民・大英帝国と未開の人々といった構図における活動の実態をメインに、総力戦・福祉国家新自由主義の20世紀以降までカバーするもの。奴隷貿易商人コルストンをはじめ豊富な事例が紹介され勉強になるが、やや総花的な印象も。「無心の手紙鑑定局」に象徴される強固な自助意識による「無用な弱者」への厳しい目線とチャリティーの隆盛についてもう少し切り込んでほしかった。自己責任をあげつらうだけでチャリティーすらない現代日本がむしろ異常で、自助を徹底させるために必要不可欠なものとして発展したとも考えられるのではないか。

チャリティの帝国 - 岩波書店