wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

島尾新『画聖雪舟の素顔』

本日は公務出張扱いで一日フィールドワーク。さすがに汗びっしょりでペットボトルも5本目。早朝出発で往路の高速バスは爆睡していたが、帰路はそこそこ起きていたので、読みさしの表題書を読了。禅宗に手を出していることもあって衝動買いしていたもの。副題に取り上げられている天橋立図について20年程前に同一出版社から著者編著が刊行された際は、現地のフィールドワークは3回・計1週間ちょっとだったとのこと。それ以来の思索と調査の成果をもとに、改めて位置づけ直したもので、成果は以下の通り(ネタバレあり)。

朝日新聞出版 最新刊行物:新書:画聖 雪舟の素顔

漢詩文は本人の要望をうけて記されたもので、高僧への売り込みなど自己プロジュース力がきわめて高かった。②京都でそこまで評価を受けていたわけではなかったが、大内氏とのつてで山口に迎えられ、その後は「スタッフ」(著者の表現)として終生活動したこと。③明へもあくまで遣明使節の一員として派遣されたものだが、「随行カメラマン」としての活動が、見知らぬ名所を第三者に伝える独自の表現を生み出したこと。④天橋立図も現存していない正本は大内氏に一色氏と丹後府中の情報を伝えるもので、種々の要望に応えて複数の構図で作成されたこと。伝承の扱い、特に弟子との関係は④など単独でおこなった画業なのかという問題が残されているが、なかなか興味深いもの。ただ①はそういうものだとはわかってはいるものの、武将に関わる漢詩文の史料批判は難しい。天隠龍沢論も結局できないまま、いまの仕事も離れることになりそう・・・。