wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

深井雅海『刀剣と格付け』

本日は千里山、駅から校舎まで歩くだけで汗だくになった。チラチラ書いているが、業務の関係で刀剣銘に手を出す羽目となり、昨日の会議で本年度中の論文執筆と、一般向けの講演会が正式決定された。もちろん室町経済史研究の一環として位置づけられる目処が立ったためだが、前提としてさまざまな刀剣関係の書物を乱読している最中。かつて技術史で室町技術革命が提唱されていたことなど。いろいろ勉強にもなることもあるが、独特の用語にはなかなかなじめないままでいる。全て借り物のためここで紹介することはしていないが、表題書は本年6月発行で、5月の学会で自腹を切ったため、ここに備忘を残しておくhttp://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b357763.html。著者は江戸幕府研究が専門で、武家儀礼としての将軍への刀剣献上・下賜の詳細、吉宗による従来の古刀(室町期までのもの)重視から新刀(慶長以後とされる)への変化による贈答の簡素化と、「享保名物帳」による刀工の格付け、それが以後の将軍に与えた影響などについて論じたもの。圧巻は巻末に示された刀工の格付けと価格評価で、当方がこれまで収集してきた名前を確認することができ有益。興味深いのは著者が紹介するデータの基礎的整理は、指導する女子学生の修士論文がもとになっている点で、近年の女性による刀剣ブームがあったからこそ出版されたものといえる。当方の研究はこうした刀工評価とは全く別次元のところにあるのだが、やはり知っておくことにこしたことはない…。