wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

黒瀧秀久『森の日本史』

本日は本年姫路初出勤(外仕事は昨日の岡本が最初)、阪急は心なしかすいていたが、JRはむしろ混んでいたぐらいで明石まで座れず。そういうこともあって岩波ジュニア新書という媒体でどういうことが説明がされるのかという興味で購入していた表題書を読了。全体を①旧石器時代から古代までの森林・自然と人間の共生の時代、②古墳時代から奈良時代以降の森林の伐採と利用が都市造営等で畿内中心に広がっていく時代、③室町中期から近世・近代と続く大森林伐採時代の幕開け、④国産材の価格下落の中で新たな森林の多面的機能の評価の登場の時代、と区分して叙述したもの。考古学理解が一昔前・旧石器時代から人の手による森林焼失があったという研究の無視などと別に、驚いたのが講座派マルクス主義経済史的な叙述スタイル。ネオリベ経済学者が手を出さない分野のためとはいえ、1957年生まれでこういう研究者がいるというのはある意味で驚きで、文体も一貫して論文調。当方はすんなり読めて近代パルプ生産における樺太材の比重、戦時下の林業生産の拡大、バブル期の林地許可開発面積の肥大化など興味深い表もあり勉強になったが、ジュニア新書には全くそぐわないもの。なお同書は「文章の無断転用」という理由で出版社が回収を告知しており、リンク先も品切れ表示。明記された四冊とも参考文献には上がっており、そこまで悪気があるとは思えず、むしろ全体にこの文体でオーケーを出したことの責任がより大きいように思える。

森の日本史 - 岩波書店