wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

森岡孝二『雇用身分社会』

今朝起きると太ももに違和感が…。どうも昨日の山城行きで筋肉痛になったらしい。本日は平場を歩くだけでも痛みがあり、非常勤先の山登り・山下りはかなり負担になり、急がないエスカレーターでは歩かないようにした。今までほぼ経験したことがなかった結果で、またまた寄る年波を痛感させられることになった。頭のほうも余り働かず、2大学ともスムーズにいかなかったが、電車読書のほうはとりあえず読了https://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1510/sin_k853.html。だいぶ前に新本屋で衝動買いして積んでおいたもの。著者は経済学部に籍を置きながら過労死など企業中心社会の諸問題を追及する書を刊行してきた方だが、あとがで「一応の締めくくり」と記されているように、歴史を振り返りながら、日本の労働社会の行き着いた姿を「雇用身分社会」と表現したもの。そこでは戦前の『職工事情』・『女工哀史』などから、雇用身分・口入屋・一年で半数が入れ替わるほどの使い捨て労働・すさまじい虐待などを取り上げたうえで、80年代後半に成立し、規制緩和により業種を拡大していった派遣労働が雇用身分社会の復活であること、その一方で60年代から女性低賃金労働者としてのパートタイマーが一貫して存在したこと、それと対比して70年代後半から長時間残業が当たり前の正社員なる用語が出現し男女差別を伴う雇用身分が存在したこと。それが90年代半ば以降に「多様な働き方」という名目で格差と貧困が顕著になったこと、政府は政策的に助長するとともに他の施策によって貧困を解消することなく放置したことが論じられ、労働者派遣制度の見直し・非正規労働の引き下げ・規制緩和と決別・最低賃金の引き上げ・八時間労働制の確立・性別賃金格差の解消を解決策として提起する。戦前から形態を変えながら一貫して雇用身分が存在したこと(むしろ近世社会以来というべきか)、多数の統計によってそれが論証されている点は非常に有益。ただその解消策は従来型にとどまっているところがあり、雇用身分社会の解体のためには、「同一労働同一賃金」と「賃金に応じた使用者の社会保障負担」という原則の徹底がもっとも重要ではないか。とりわけ大学非常勤講師という雇用身分格差という点ではもっとも大きな社会にいる身としては強くそう思う。なお90年代以降の日本社会が徐々に雇用身分社会を強化させていく点で、それが新卒者に常にしわ寄せがもたらされるかたちで促進されたことも強調されるべきだろう。もっとも学問世界では余りにもひどかったため、現代は20代院生の不足が決定的な破綻をもたらすのは明確になりつつあり、若年人口の減少により社会全体でも低賃金アルバイト労働が確保できなくなるのは、そう遠い時期のことではないだろう。