wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

藤井一至『大地の五億年』

本日で本年度の外仕事は終了。月曜振替の五限だけだったため、1月の回数券切れ切符を買うためにチケット屋に寄ったところ、年賀状が46.5円まで値下がりしていた。昨年は逆に年の瀬には値上がりしていたので、早くに48円で購入したのだが、もう少し待つべきだったようだ。昨年以上に販売不振なのだろう。そういうわけで電車読書の紹介もこれが本年最後https://www.yamakei.co.jp/news/release/20151118.html。1981年生まれの土壌学者による新書で、5億年前に誕生したシダ植物によって4億年前に土壌が誕生してから、キノコと樹木の物資循環、火山灰などが絡み独特の土壌が形成されること、そこで育まれた微生物・昆虫から恐竜にいたる生物と土壌との多様な共生関 係、1万年前に始まる農耕の展開と土壌、熱帯土壌におけるパーム油栽培・日本の大量食糧輸入など土壌からみた環境問題にいたるまで、わかりやすく説明されている。日本の酸性土壌とブナ・スギとの関係、乾燥地を選んだ古代文明の灌漑農業と塩化による荒廃、湿潤地の酸性土壌に対応するための焼き畑および水田農業、窒素を吸収しタンパク質を含んだコメの高い栄養価(現在は甘みを増すために低タンパクに改良されたという)とドジョウの活動、窒素肥料としての糞尿の役割、化学的窒素肥料による生産拡大の一方で土壌の酸性化の進行、酸性土壌をアルカリ化するための石灰の利用など、土壌をめぐるさまざまな物資循環が農業の大元にあることがよく理解できた。著者は若いわりに熊野山地から東南アジアの熱帯雨林・カナダの永久凍土まで豊富な調査経験を有しているようで、様々な事例が紹介され文章もこなれていて有益。本日某雑誌で日本史研究者おすすめの新書が紹介され3冊に集中していたが、玄人評価に過ぎるような気がした。何れも良書だとは思うが、本書のようなものも歴史学者に書いてほしいところ。ともあれ何もなければ本年の更新はこれが最後になるかと思います。皆様よいお年をお迎えください。