wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

松井和幸『鉄の日本史』

本日は紀要初校返却のため姫路出勤、最後までバタバタしたが何とか手を離れる。ただ印刷会社にもコロナ陽性による出社停止が出たようで、今後のスケジュールにも影響。二校・念校のため三月の勤務予定はぐちゃぐちゃに。東京へ史料調査に行けないため可能だが、なんだかなあという気分。そんななかで電車読書はタイトルにつられ衝動買いしていた表題書。製鉄のはじまりから八幡製鉄所の操業までの文字通りの通史、著者はお決まりの広島大考古で、県埋文を経て北九州の博物館勤務とのことで実現したもの。各章にはまとめがあって、製鉄の仕組みについてもアフリカの事例も紹介しながらわかりやすく説明されている。なお著者は近年少数派になったと思われる弥生後期製鉄開始論者、朝鮮半島での製鉄炉の未確認・輸入鉄素材の実態が不明とのことだが、著者がいう弥生後期の製鉄痕跡も単発的で以後に連続するようには思えない。なおこの問題は古墳時代の社会編制とも大きく関わる議論だが、当方にはこれ以上の見解はなく今週末に職場で研究会があるので尋ねてみたいところ。それと別に勉強になったのは中世小倉鋳物師の存在とともに、近世後期以降の展開で、たたら製鉄技術者・石見銀山関係者の諸藩への拡散と高炉の模索、さらにたたらの閉山と明治炭鉱への流入という現象があったことは興味深い

筑摩書房 鉄の日本史 ─邪馬台国から八幡製鐵所開所まで / 松井 和幸 著