wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

瀬川拓郎『アイヌの世界』

昨日は中国都市史の報告、本日は古代の池・五世紀の王権・本願寺の組織構造・近世の村と里山を除地とする根拠になっている宗教者との紛争に関する報告を聞く。何れの内容も興味深いものだったが、討論での近世史研究者の史料の外への配慮のなさには驚かされる。昨日は飲み過ぎたようで仕事の疲れもたまっていたため、本日の飲み会には出席せずに帰宅。そういうわけで昨日読了した本書の感想を残しておく。考古学の立場から諸地域と交流によるダイナミックな展開でアイヌの歴史を描いた前著が大変面白かったが、本書はそれを前提とした補編と言ったところか。それでも縄文人のイノシシ儀礼から展開するクマ祭の起源論・阿部比羅夫の北方遠征とそれを受け止める続縄文人とオホーツク人との微妙な関係・言語からみた続縄文人と古代日本語の話者との交差・10世紀前後の800近くの竪穴住居からなる大集落・日高産砂金が奥州藤原氏にもたらされていた可能性・北回りで到来した清朝起源のクジャク羽など、興味深いトピックが並べられ、考古学をベースとしながらアイヌ文化の伝承者からの聞き取りなどもあわせて、生き生きとした世界が描かれている。本日の堤の工法(土層の間に葉をひいて突き固める版築の一種)でも思ったが、交流の直接的証拠が得られる考古学は、自覚的な研究者が取り扱うと大変広い世界を描くことができる。文献史も常に全体を見通した中で考えなければならないことが、改めて自覚されるところであるhttp://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2584956。明日も研究会が入っているのだが、諸事情もあり欠席させてもらうことする。Oさん申し訳ありません、7月?は行きます。