続けて電車読書の備忘。これまた講義の始まりに備え、積ん読の順番を先倒しにしたもの。明治以来の人類学・考古学での日本人の起源論を、記紀に依拠した先住民族にとって変わったという「人種交替」、考古遺物からの「人種連続」、縄文・弥生土器の編年研究の進展による「人種交替」を一定度引き継ぐ縄文/弥生人モデル、1930年代末以降の記紀の強調による固有日本人の強調、敗戦後の登呂遺跡ブームと石器時代から縄文時代・弥生時代への転換、弥生の平和な米作りイメージ、土井浜貝塚人骨分析以降の縄文/弥生人モデルの勝利と位置づけ。人類学・考古学相互、それぞれの内部の差異、人類学・考古学者のそれぞれの戦時体制への協力、「大東亜共栄圏」期の海外に雄飛する日本人像と、戦後の平和の弥生人イメージなどの時代の規定性などを科学史家として丁寧に跡づけている。講義に直接影響はなかったが、踏まえておく前提としては有益。