wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

森先一貴『日本列島四万年のディープヒストリー』

本日は久しぶりのお座敷。港の位置の変化と維持管理を文献から検討するという余りにもマニアックなもの。某企画の関係で特別参加されていた方々も挨拶だけで帰られたぐらい・・・。それはさておきタイトルだけで衝動買いしてしまっていた表題書の読みさしを読了。副題に先史考古学からみた現代とあるように、旧石器・縄文の考古学研究の成果から、列島文化の豊かな成果を強調し、列島内の多様性、定住生活の影響、四季の営み、旧石器時代の陥し穴の意義、石器技法からみた身体性、虫歯、社会の稠密化などといったテーマについて、リモートワークも含めた現代の諸問題と対比させながら論じたもの。一節ごとに参考文献が記され読みやすいのだが、そこまでの卓見は感じられず、日本の遺跡の評価についても疑問。土器の成立について東北アジアがもっとも早いと理解していたが、本書では炭素年代から日本列島で16500年前から、黒竜江省で15000年前・アムール川で14000年前として、日本列島の古さが強調される。『国民の歴史』に立ち返ったような議論だが、そもそもこの時期の列島は大陸とつながっており、炭素年代の出方、日本における発掘調査の頻度、遺跡の残り方なども考慮すべきではないか。著者は単純な縄文賛美論に与しているわけではないが、古びたヨーロッパ中心史観をことさら取り上げて対比させるのは、文化庁にも出向した本流研究者として危うさを感じるところ。

朝日新聞出版 最新刊行物:選書:日本列島四万年のディープヒストリー