wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

篠田謙一『人類の起源』

本日は自治体史がらみの調べ物で荒本へ。切羽詰まってからようやく文献に気づくという情けなさだが、電車読書の備忘だけは残しておく。著者の2007年刊著書はここで紹介しhttps://blog.hatena.ne.jp/wsfpq577/wsfpq577.hatenablog.com/edit?entry=26006613387654422、いくつかの講義でも活用させていただいていた。ただその際の現代人のミトコンドリアDNAを基本とした研究は、2010年以降に古人骨から核ゲノムを採取して分析することが可能になったことで、大きく変化したようだ。①ホモ・サピエンスの誕生が20万年ほど前から45万年前に遡ること。②ネアンデルタール人・デニソワ人などと交雑を繰り返していたこと。③アフリカ内部での移動がその後の世界的展開に大きな意味を持っていたこと。④狩猟採集民の活動地に牧畜農耕民が移住することで大規模なゲノムの変化を伴うものだったこと。⑤日本列島もその例外ではなく本土現代人の縄文由来の遺伝的要素は10%程度で渡来した人々飲み込んで成立したといえること。などでとりわけ④・⑤はかなりシビアな問題を含んでおり、かつての弥生大量渡来説との差異も気になるところだが、講義資料も修正が必要に。なお「縄文人旧石器時代の日本列島集団の直系の子孫」で南方から北上したとしながら、九州と琉球列島での縄文人はDNA系統が共通なので、九州から流入したと評価するのは疑問。またゲノムデータ解析は十指に満たない施設で行われるビッグラボの研究になっているとのことで、考古学的研究との乖離、先住民社会への無理解(オーストラリア・パプアニューギニアではデータが得られず、著者の盗掘によって得られたアイヌ人骨分析も批判を受けていたはず)などの問題も抱えているようだ。人類の起源|新書|中央公論新社

荒本の風景が変わっているなと思ったら、イオン(もとカルフール)が解体され消滅していた。戦争で破壊されなくても各地におとずれる状況か。