wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

倉沢愛子『増補女が学者になるとき』

本日は公務研究会。六角氏研究者をゲストスピーカーにお招きして、当方も簡単ならば報告。旧知の方からすればこんなことをテーマにしているとは想像もつかなかったのではないか・・・。今週土曜日・来週土曜日とまだ二本報告準備が必要なのだが、とりあえず電車読書の備忘。著者の名前ぐらいは存じ上げており、以前『インドネシア大虐殺』はここで取り上げたはず。ただ1998年初版の表題書のことは話題すら記憶になかったもの。東大闘争時にインドネシア研究にめざめ、大学院で同級生と結婚して、単身インドネシア現地留学、日本語学校に職を得たベトナム研究者の夫とともにサイゴンに居住、陥落で日本に戻り夫婦そろってアメリカ・コーネル大学へ。博士課程修了後にオランダで文書調査・再びインドネシアでフィールド調査。先に大阪外国語大学に職を得た夫についで摂南大学に職を得て帰国も、長年の別居生活で亀裂が生じ離婚。新しいパートナーと子宝に恵まれたという、波瀾万丈の研究前半生が描かれている。依頼を受けて刊行まで10年かかったというように逡巡があったようだが、率直な実感、何でも見てやろうというバイタリティーはとんでもなく、まさに第一線で現代史の方法を切り開いてきたことが納得できる。増補版ではその後の家族との歩みが記され(これまたすごいとしか、いいようがない)、膨大な資料整理を行っているとのこと。比べるべくもないが、振り返るとなんとみすぼらしい研究者人生を歩んできたことか・・・。

増補 女が学者になるとき - 岩波書店