wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

仁木宏・福島克彦編『近畿の名城を歩く 大阪・兵庫・和歌山編』

本日は講義三コマ(古墳研究の紹介)の後に、病院の様子見。いろいろ順調にいかないようで、さまざまな局面で限界点に近づいていることを思い知る。それはさておき電車読書の備忘。昨今のブームを受けた企画らしく、人口が多く購買層が望める近畿・関東それぞれ二冊本のうちの一冊。発掘された中世城館・戦国期山城・寺内町など戦国環濠都市・織豊期城郭などから79を選んで、2頁から6頁の分量で紹介したもの。執筆者はいわゆる「城屋」(近世軍学以来の伝統をもつ城郭研究は、地表面観察による縄張り図作成という技法をアカデミズムとは無関係に確立させてきた。現在でも大学に籍を置く城郭の専門研究者はごく少数で、城郭演習といった専門の授業もほとんど開講されていないと思われる。そのため文献史学・考古学などで専門職に就いておられる方々以外に、別に生業を持ちながら城郭研究で業績を重ねてきた方々がまだ多数おられる。かつてはかなりの層を占めていた文献史学に造詣をもつ「郷土史家」がほとんど消滅してしまったのとは対照的)だけではなく、旧知の文献史家も含まれ彼らが縄張りの解説をしているのは少し笑ってしまうところ。また戦国期の政治情勢という点では南河内紀伊と大和は密接なつながりをもつが、府県別編集という事情から奈良県はここには含まれていない。他にも内輪ネタで思わないところもないが、とりあえず専門家の解説書として類書とは異なるものと評価しておくhttp://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b186424.html。帰路のバスで専任教員と同席となり、来年度からクオーター制導入との情報を得る(院生はすでに本年度から導入済みらしい)。この制度が紹介された時から予想されたとおり、口実となっている留学のためというより専任教員の「これで俺たち奴隷も、サバティカルが得られる」という思惑が後押ししているようだ。当方のような非人の存在を全く無視した発想だが、丸山真男的な抑圧委譲そのままの反応で、下克上の方策は見当たらない・・・。