wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

山本紀夫『高地文明』

昨日は鳴門出張、帰宅してZOOM研究会+懇親会(途中参加ということもあって空気を読まない質問をしてしまう)、本日は南あわじ市福良出張。いろいろ勉強させてもらったがこちらは省略し、高速バス2往復の衝動買いしていた表題書の電車読書備忘のみを記録。アステカ・アンデス(インカ)・チベットエチオピアという低緯度高地で、独自の栽培農耕と家畜化を前提とし独自の宗教観念を持つ文明が展開したとし、これを高地文明と定義づけたもの。それ自体はわからないではないが、副題に「もう一つの四大文明」の発見とあるように、従来の四大文明は所詮コムギなので同一の亜種に過ぎないとし、先行研究に対して「野外での調査や観察の成果を重視せず、文献に依存する研究者が少なくない」とし、教科書の書き換えを要求するとなるといかがなものか。そもそも古代文明論とは単に農耕・家畜化だけでなく、文字を含む体系性とその後の影響力を含めて評価すべきもの。著者も認めるように高地文明は周囲への影響力が限定的で、並立させるのには違和感。またチベットエチオピアなどは文献史学の成果もある程度は存在しているはずだが、それをスポイルしているようにみえるのも問題で、著者のもとともとの専門といえるアンデスでもスペイン人の記録が利用されている。20年前だったら「つくる会」系に取り込まれていたようにもみえるが、今はどうだろう。

高地文明―「もう一つの四大文明」の発見|新書|中央公論新社