wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

竹下節子『疫病の精神史』

本日は今期最後の枚方3コマ。本来なら他と同じく今週が試験だったのだが、対面授業への移行期間休講のため一週遅れ。ファンクションキーでマイクオフになり(こちらはカタカナ変換のつもりだったのだが)、遠隔配信ができなくなるというトラブルがあったが何とか終了。そんななか衝動買いしていたコロナ関連企画本の備忘。著者はフランス在住のカトリック史研究者とのことで、キリスト教とりわけカトリックによる、病者に寄り添い「魂の救い」を説き、顕著な実践により聖人として顕彰されてきた歴史を、イエスからカトリックの隆盛、対抗宗教改革、フランス国王による「王の奇蹟」、19世紀の感染症対策と近代医学の成立まで展開、最後に神学=「魂の救い」から医学=「肉体の救い」への転換と、コロナ禍における肉体と精神の複雑な関係を呼び起こしたもの。手洗いを律法とするユダヤ教に対して、「穢れた者」を排除しないというイエスの態度が、長らく感染症者への救済というかたちで継承され、コロナ禍初期にも神父に多数の犠牲を出した一方で、ロックダウンが受け入れられたのも弱者を守ることの価値が説かれたためというのは興味深い。著者も述べるように感染を「穢れ」「恥」などと受け止め、自粛警察で行動制限がなされた日本とは大きな違い。8月1日にどのような議論がされるのかも興味深いがあいにく仕事。

筑摩書房 疫病の精神史 ─ユダヤ・キリスト教の穢れと救い / 竹下 節子 著