某論集原稿を執筆中なのだが、あると思っていた文献が見当たらず、非常勤先の図書館へ。論文は一度読んだきりで、整理が面倒でコピーを取らなかったのが失敗・・・。そういうわけで読みさしの表題書を読了。現地で多数の発掘調査を実施してきた経験から、遊牧民の登場からはじまり、遊牧王権としての匈奴・鮮卑・柔然、トルコ系の遊牧文明として突厥・ウイグル、遊牧世界として契丹・阻卜・モンゴルときて、最後のイェケ・モンゴル・ウルスとその後までが取りあげられる。寒冷で乾燥した気候のため過去の遺跡の残存状態がよいとのことで、近年のゲノム分析による「民族」系統・人骨からの食生活分析・家畜骨からの来歴・木材からの気候研究・墓制・城郭遺跡のスケールの特質・発掘調査などを駆使して、その全体像が論じられる。カラコルムに四季の離宮が存在するのも驚き(夏冬だけと思っていた)。欲を言えばカラー画像が欲しかったところ。なおあとがきは、モンゴルに留学経験がありフィールドワークを積み重ねてきたと自認する著者による、「書斎の安楽椅子」研究者への批判、名前は明記されないが、痛烈な印象。