wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(お仕事募集中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

似鳥雄一『税と権力』

本日午前はクローズドの遺跡見学会、午後は某団交ということで、移動・待ち時間は3時間以上。おかげで読みさしになっていた表題書を読了。副題の「中世人はどうして税を払うのか」について、歴研大会遠藤報告の考え方をベースにした通史。ただしもとになったのは大学での荘園の生成から終焉までの講義とのことで、事実上は荘園史で、結論は「中世人が税を払ううえで重要なのは、誰が税をとりに現場へ姿をあらわすか」で、「領主の在地性」「顔のみえる権力」と表現される。著者の荘園史の捉え方としては一貫性を有したもので、ちょっと雑な政治史がノイズに思えるところもあったが、入門書としては水準に達したもの。ただ税といわれると引っかかるのが、かつて議論されていた大田文・公田体制への言及が全く欠落していること(守護段銭は登場するが、荘園年貢と同種の評価)。また検注そのものは触れられてはいるのだが、基本的に収取する側の論理からの説明になっていて、だったら「経済外強制は」との古典的な問を投げかけたくなる気分。なお235頁「聖徳太子が推古天皇から寄進した水田を、後に法隆寺(奈良県斑鳩町)の荘園としたのが鵤荘」というのは、全く意味が理解できなかった。

税と権力 中世人はどうして税を払うのか | 早稲田大学出版部