今週も木・金は通常勤務。電車は高校の分散登校もあってかかえって混んでいるぐらい。当方は講義のみなので遠隔だが、大学生も見かけるようになった。そんななかで電車読書は表題書。寄進を手がかりに、中世の荘園・武士・有徳人・地域社会・寺社・惣を通底する構造を読み解いたもの。一つ一つの事例も興味深く、中世の権力のあり方もするどく照査されており、さすが東国・西国、前期・後期の何れにおいても優れた実証論文を発表されている著者ならではの仕事。ただこのような形で一書にまとめてしまうとやや総花的な印象を受けるのも率直な感想。とりわけオーソドックスなテーマを正面から取り上げるという著者の姿勢が(同様のタイトルを掲げた某氏のように距離をおくことに賛同しているわけではないが・・・)、それぞれの事例の豊かさをむしろ見えにくくしているようにみえるのは残念。なお細かいことだが13頁図2は余りにもいびつで大阪周辺の水系は明治以後のものにされてしまっている。