鈴木董『文字と組織の世界史』
本日は空き家の風通し、二週間以上空くとやはり空気がよどんでしまっている。植木も伸び放題でそちらの対処も必要…。明日から秋の講義もはじまり、火曜日からの集中講義の準備も終わっていないが、電車読書の備忘https://www.yamakawa.co.jp/product/15058。これまた秋からの講義で文字と官僚制を取り扱っている事情もあって衝動買いしてしまったもの。著者はもともとオスマン帝国の専門家だが、世界を中国中心の漢字世界、インド中心の梵字世界、イスラムのアラビア文字世界、正教のギリシア・キリル文字世界、西欧のラテン文字世界に区分して、「比較文明史」として概観したもの。構想には大変興味が惹かれたのが、内容は期待外れ。それぞれの文字世界の構造的特質にさほど踏み込まないまま、概説的な世界史が叙述され、初歩的な事実誤認も一つ二つではない。先に紹介した岡本著書のような西欧中心史観には立っていないが、それに代わる方法がないため逆に冗長に感じてしまう。ただ現代史にページが割かれているのがもう一つの特徴で、機動力・瞬発力に優れた西欧の「動物的世界」に対して、持続的な「植物的世界」として中国・インドの台頭を評価している。