本日は組合執行委員会、こちらはこちらで疲弊する。そんな中で読了したのが表題書https://www.iwanami.co.jp/book/b378356.html。ちょうど火曜日講義に重なっていたため、衝動買いして積ん読の順番を入れ替えたもの。アヘン戦争から韓国併合までの時期を、「世界の諸地域は相互に『関係』する中で、さまざまな『相互作用』を及ぼしあい、その時々の世界史の支配的な『傾向』が拡がっていき、それがその地域なりに『土着化』されて、諸地域の歴史が『連動』する」という視点から捉えたもの。プロローグが坂本龍馬の「船中八策」から始まっていてどうなることかと思ったが、西欧植民地帝国の拡大とその確執、反作用としての各地の民衆運動が与えた影響、日本にもたらした諸条件と「土着化」としての「帝国」化といった動きが、各地域ごとではなく同時代的連関をもって論じられておりいろいろ勉強になり講義にも有益。日露戦争の結果がバルカン問題を再燃させたことは認識していたが、1908年にハプスブルク帝国によるボスニア=ヘレツェゴヴィナ「併合」が平時における「併合」の最初で「韓国併合」につながっているというのは初めて知った。著者は東欧研究者だが、かの牧野伸顕がバルカンの動きに注目していたなど明治日本にそのような視点があったことが一つのきっかけとのことで、世界を認識しようとした「真剣味」は今とは雲泥の差といえる。なお本書は『シリーズ日本のなかの世界史』全七冊の皮切りで、執筆者による研究会のコーディネーターは渡辺勲氏とのこと。7人のうち5人はここでも何度か言及した『新しい世界史』シリーズの著者で、この30年で学問は継承されているのか、これまた考えさせられるところ。