wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

鈴木透『食の実験場アメリカ』

本日は組合委員会で外出。火曜日が時間調整休講だったこともあり、ようやく読了した電車読書の備忘www.chuko.co.jp/shinsho/2019/04/102540.html。これまた後期の講義のこともあり、余り期待せずに衝動買いしていたものだが、意外と掘り出し物。アメリカとは現アメリカ合衆国のことだが、食文化においては先住インディアンのトウモロコシ・カボチャ・豆食文化、アフリカ黒人の米食・鶏料理によるもてなし(フライドチキンに進化)、西インド諸島タイノ族の低温丸焼バルバコア(バーベキューの語源)が、入植白人とハイブリッドに融合して成立したこと、独立後のドイツ系(トマトケチャップ、ハンバーグ)、イタリア系(ピザ)などによるさらなるクレオール化、ピューリタン的禁酒運動による炭酸飲料の健康植民志向に末にうまれたコカ・コーラ、効率化と台所の進化・自動車対応の結果としてのファーストフードの膨張、ヒッピーによる対抗食文化とビーガン、新自由主義の結果としての貧困層の肥満化と対抗するものとしての新しい農業モデルの志向といった歴史的展開が示され、従来のねじれていたアメリカ型多文化主義と自国中心志向を、国際協調主義と公的世界の再構築へと意識転換する手がかりになるものとして食文化史の射程が示されている。小ネタ的にもいろいろ有益であるとともに、先の岩波新書で政治史の刷新を主題にしていた記憶史などアメリカ史の最新研究と食文化史のリンクについても最後に明確にされており、その意味でも勉強になった。食生活史料は細々と集め続けており、いずれ自身でも形にしたいところ…。お東大先生騒ぎで昨日のアクセスが桁外れになっているようで、某氏のネット上での影響力には驚くばかり。