wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

立石泰則『戦争体験と経営者』

本日は実家の様子見。当方も停電はなかったが、賃貸マンションの屋上の排水設備に損傷があり、周辺の信号はあらぬ方向を向いているが、実家周辺は昨日台風が通り過ぎたとは思えないほど穏やかで、一安心。そんな中、前エントリーと比べると一章分の文字数にも満たない表題書を読了https://www.iwanami.co.jp/book/b371358.html。書店の3000円キャンペーンのための埋め草で、一番軽かったため徳島にも持参したもの。よく知られた堤清二中内功に加え、通信班として軍の虚実を実感し、ラジオ修理からはじめケーズデンキ創業者となり、第二次安倍政権発足後に会社幹部を集めて反戦を訴えたという加藤馨、インパールの生き残りの塚本幸一など八幡商業同級生三人の生い立ちからワコール時代までが紹介され、「全体」への服従優先が戦前を総括せずに続いたとし「個」の尊厳を重視した唯一の経営者として、1978年に松下電器社長となった山下俊彦が取り上げられる。なお追記として塚本が1997年に日本会議初代会長に就任したことについて、戦後に「生かされている」意味を宗教的に追求していた姿勢の延長で捉えるべきと補足がある。個々の人生は大変興味深く、紹介されている経営者の典型的な「日本的経営」スタイルが無批判に賛美されているわけでもない。塚本の姿勢もその通りなのだろうが、財界の交友関係や戦前から続く財閥企業ではどうなのかなどが見えないと、全体的構造はわからない気はする。