wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

横山百合子『江戸東京の明治維新』

昨日はJRのトラブルのため姫路で30分遅れのアナウンス。分かっていたのだが甘く見ており回数券を使って入場済みのためあきらめ。最終的には55分遅れで出発し、研究会に報告終わりかけようやくたどり着く。そのおかげで読了した電車読書の備忘https://www.iwanami.co.jp/book/b372707.html。当初は東京地域史で講義で使えないと判断したためスルー。ただ各所で絶賛されていたのに触れ、ようやく購入に踏み切ったもの(ただ10月前半段階の巨大書店でも初版だった)。出だしこそ大手町周辺の地図ものだったが、薩摩藩関係者の盗賊行為など治安の崩壊、借屋経営で生き残りを図る旧幕臣・家守、吉原の遊女、弾左衛門支配の終焉と皮革・賭場経営に乗り出した人々の挫折と、人間の姿を活写しながら、近世身分制社会の解体から「四民平等」政策までを予定調和ではないダイナミズムで描き出しており評判通り。とりわけ越後でうまれた「おとよ」が七歳で日光街道の宿駅の遊女屋に売られ、「かしく」と名乗らされ各地を転売され、22歳の時に吉原で娼妓解放令を迎え、「遊女いやだ」というたどたどしい請願文書を出した後に、借金を抱えさせられたまま遊女として生きなければならなかった経緯は圧巻。著者監修でドラマ化してほしいところ。なお著者は名前を見た時期から当方より若いと思っていたのだが、1979年東大卒業後は神奈川で高校教員をされており、1999年に退職して院入学したという経歴で、夫は伊徳氏だということは初めて知った。某著書も本日不在者通知で届けてもらい入手、装丁も立派でさすが。