wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

木村元『学校の戦後史』

今朝はJR環状線内の事故のため、阪和線・関西線ともわざと遅らせ。東京と異なり線路も増やさずに乗り入れすると事故の時の影響が大きい。当方の乗った電車は奈良に5分遅れで着、接続電車は定刻通りに出発したので、本来間に合うはずの一本後に乗っていれば、30分待ちとなり駅からタクシーでかろうじて間に合うという羽目になっていただろう。地下鉄のわざと遅らせを見越して一本前の電車に乗っているため事なきを得ているが、七月まで無事に過ぎてくれることを願うばかり。そういうわけで久しぶりに自腹購入した電車読書本の紹介https://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1503/sin_k818.html。あとがきに「本書は、日本の学校の戦後史をたどるにあたって、その前提として近代学校の成立から書き起こした~また、戦前からの『日本の学校』にも紙幅を費やした~近代学校と『日本の学校』の二層の上に成り立った戦後の学校が、こんにち大きな転換点にあるというのが、本書の戦後の学校の見方である」とあるように、本文193頁のうち、53頁までが戦前部分に費やされている。ポスト・モダン的視点と日本的枠組みという二重構造から見直すという全体史的方法論はわからないでもないが、新書としてはあまりにも無謀な試み。とりわけ131頁以降の叙述は、臨教審から現代までをごった煮に放り込んだもので、小中高大の諸問題群がトピック的に羅列されているだけ。その上に新自由主義とセットになっている受験私学の拡大にほとんど触れられていない。すでに戦後の単線型教育システムは実質上崩壊しており、階層別の複線型ともいうべき状況になっていることとその矛盾という視点が、この20年来の学校システムひいては地方自治体をめぐる動向を見るうえでは不可欠ではないか。なお偏差値が60年代半ばの中学浪人の増大状況にたいして、教え子を救いたいという中学数学教師の発案によるものというのは初めて知った。