藤原辰史『トラクターの世界史』
本日はルーティン姫路。相変わらず車中はグッタリしているが、朝の大阪駅で窓側座席確保のため15分待ち時間などもあり読みさしの表題書を読了。以前からいくつかの著書には気づいており(残念ながら未読)、戦争法反対でもお名前を見かけたこともあって、講義がらみと合わせて衝動買いしてしまったものhttp://www.chuko.co.jp/shinsho/2017/09/102451.html。第一次大戦中にアメリカで実用化されたトラクターについて、資本主義的巨大農場のアメリカ、上からの集団化が進められたソ連、ポルシェでの開発が期待されたナチスドイツの動向と、戦時中には戦車生産に転化したこと、戦後の社会主義諸国、途上国への普及、2000年段階で農地面積当たり最大で総数でも世界第三位の日本における技術開発と企業の展開が概観され、農業そのものを農地の外からの管理作業に替える試みの始まり、土壌浸食・事故などの社会的費用の積み重なりの一方で、それとは異なる生物と機会のつきあい方の可能性をかすかに展望したもの。やや総花的な印象も受けたが、飼養が必要な牛馬とメンテナンス・石油燃料が不可欠なトラクターとの相違と世界で通底する農民意識、世界恐慌期のアメリカ農業、岡山・島根などたたら製鉄地域からスタートした日本の状況など、いろいろ勉強にはなった。確かに20世紀という農業社会から工業社会への転換において、自動車メーカーが関わったことも含めて重要なキーとなるものなのだろう。