wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

水島治郎『ポピュリズムとは何か』

本日は地下鉄ショート・カットのため地上に上ったところ突然の吹雪、教室の空調も寒く、鼻声での講義となったが何とか最後の回を終える。電車読書のほうは明日の現代史のこともあって衝動買いしたものhttp://www.chuko.co.jp/shinsho/2016/12/102410.html。「ポピュリズムは、デモクラシーの後を影のようについてくる」という定義を基に、圧倒的格差社会のもとで、労働者や貧困層を基盤として分配を求め「解放」志向を有するラテンアメリカ型に対し、福祉国家となった欧州において、旧来の反ユダヤ主義・反民主主義的な極右政党から脱皮して、男女平等・同性愛肯定など「リベラル」な視点から、イスラム批判・移民排斥をとなえる勢力が、オーストリアデンマーク・オランダなどで出現し、投票権者の「特権」保持という性格をはらむ国民投票制度を利用して伸張したスイス、都市中間層が受容するコスモポリタン的な価値観への主要政党の収斂によって、取り残された地方保守・衰退産業の労働者層をとりこんだ、イギリスのEU離脱アメリカのトランプ当選など、国家による再分配を受ける移民などを「特権層」として批判の対象とする「抑圧」的傾向を有したものとして西欧型ポピュリズムを位置づけ、アウトサイダー的な党首と文化政策・公務員批判など共通する特徴をもつ大阪維新もその中に位置づけられている。こうした傾向が現在のリベラル・デモクラシーとむしろ親和的で、持続性を持ちつつあるとし、既成政治にある程度のインパクトを与える一方で、「安全弁」にとどまらない危険性をはらんでいることに注意を喚起し、「ディナー・パーティー」に現れた泥酔客にたとえられるポピュリズムによってデモクラシーの真価が問われていると締めくくられる。政治現象としての全体状況をある程度見通すことはできたのだが、明確な解決策は示されていない。客観的に観察するという姿勢からはやむを得ないとはいえ、今後の成り行きが気になるとともに、南欧やサンダース・コービーなど左派ポピュリズムの評価も聞きたいところ。明日の講義も9.11までしかできないのだが、すでに世界史はもう一段先への明確な一歩を踏み出してしまっているようだ。