wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

佐藤彰一『剣と清貧のヨーロッパ』

本日はルーティン姫路。花粉症か風邪か分からないなか、禅宗史料めくりで正長の土一揆関連のとんでもない記録を見つけてびっくり。矢野荘関連の研究で余り触れられていないようなのだが…。まだ水曜日の採点が残っているが、とりあえず電車読書の紹介。目次にいくつか興味が引かれる部分があったので、衝動買いしてしまったものhttp://www.chuko.co.jp/shinsho/2017/12/102467.html。タイトルはやや安易な気もするが、エルサレム十字軍・「北の十字軍」・レコンキスタに携わった騎士修道会と国際金融システム、ヨーロッパの都市発展と異端カタリ派とフランチェスコドミニコ修道会について解説されたもの。かつての都市断絶説が完全に過去のものとなったという最新の研究が分かりやすく紹介されており、西欧中世社会の全体の展開と、修道会が組織・金融・宗教的実践などさまざまな側面で果たした役割も示され有益。16世紀の世界進出への展望も興味深く、当方も講義でコロンブスについては意識的に強調していたが、バスコ・ダ・ガマについてはあまりその背景に触れていなかった点は反省。またドイツ騎士修道会プロイセン国家への転換、ポーランドとの関係も余り意識できていなかった。ただ一神教の異教徒への暴力性が、注釈なく21世紀のテロリズムにストレートに結びつけられている点はやや違和感。あくまで著者の議論は15世紀までのキリスト教の動向に内在して説明されたもので、それがはじめにとあとがきでは余りにも留保なく語られている印象を持った。なおさきほど見つけた出版社サイトの著者のインタビューではそれには全く触れられていない点は付け加えておくhttp://www.chuko.co.jp/shinsho/portal/104133.html