佐藤信弥『周ー理想化された古代王朝』
本日朝は降車駅を乗り過ごすという大失態。25分かけて戻りタクシーに飛び乗り(1640円)ようやく間に合う。いろいろダメージが重なっているのだろう。講義のほうは文字の歴史ということで、中国古代文字史料の現状がわかるかもと思い衝動買いした表題書を昨日読了http://www.chuko.co.jp/shinsho/2016/09/102396.html。占いに用いられた甲骨文字が、青銅器に刻まれ褒賞目的の金文に変化するという極初歩的な知識しかなかったのだが、周王朝に関する金文は相当数があり、しかも王の実在・法制度などさまざまな事実を知る手がかりになっているだけでなく、西周後半期の礼制改革によって青銅器が酒器から食器・楽器に変化するとともに、冊命儀礼(王による職務任命)・裁判の判決・軍功などかなり詳しい内容が記されることになったようだ。また春秋中期には儀礼再編がおこなわれ竹簡の出土・文字の各地における独自の発展が観られる一方で、泰のみが儀礼の再編を実施せず、文字も西周期のものを使い続け、これが後の漢字の祖になるということらしい。なお孔子が理想化した西周像は、実態とは異なりかなり理想化されたものであることも実証的に明らかにされつつあるということ。やはり生の史料の出現によって、史書頼みから歴史像が大きく変わることになるようだ。なお本書の参考文献には、紀年法で批判を浴びた近年の概説書の執筆者だけでなく、当方が漢字発達論のネタで使っている研究者のお名前も見えない。単に当該期を直接専門にしているわけではないという事情ならよいのだが…。