本日は京都で中世下京のツアー・ガイド。拙い話におつきあいいただいた方々に御礼申し上げます。そういうわけで久しぶりに電車読書の備忘。刊行されたときから気になっていたもので、少し金回りがよくなったこともあって、書店で見かけたいくつかの世界史本の中から購入したものhttp://www.yamakawa.co.jp/product/detail/2458/。南部アフリカ先住民社会を解体に導いた疫病と植民地支配との関係。抗日戦争中の中国国民党支配地域における食料徴発と災害リスク。総力戦体制下に発生し、42年9月に発生し報道されある程度の対策が取られた鳥取地震と、被害状況が隠蔽された44年12月発生の東南海地震・45年1月発生の三河地震。第一次大戦における毒ガス兵器の開発と化学研究の動向およびその後の歴史的展開などいろいろ勉強になった。最初の地震本にすこし違和感があった保立道久氏の「南海トラフ地震と『平家物語』」も、作品の読み込みから1245年の南海トラフ地震の存在を推定した手法はある程度は納得できるもの。古代中国や第一次大戦中のドイツ女性の運動も勉強になったが、関東大震災へのソ連の対応を論じたものは強い違和感。日ソ国交樹立への積極的エピソードとなった見解を否定するために、ソ連側のイデオロギッシュな状況を浮き彫りにしているが、ソ連および亡命者だけを取り上げて、2010年代の利害やイデオロギーが異なる国同士の安定的秩序を確立しようとしていた状況と対比するが、オリエンタリズムはソ連だけではないだろうし、あえて「イデオロギーの異なる国同士」という持ち出し方も、一時強く唱えられていた「価値観外交」を連想させ疑問。