wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

ウルリヒ・ヘルベルト『第三帝国』

引き続き電車読書の備忘。いろいろ評判があがっており、講義がらみで衝動買いしていたもの。「ナチズム研究の第一人者」(訳者でドイツ現代史専攻の小野寺拓氏の表現)という著者が、第一次大戦前の反ユダヤ主義の成立から、ヒトラーの自殺までをコンパクトにまとめたもの(以前に取り上げたユルゲン・コッカ『資本主義の歴史』と同じシリーズとのこと)。ナチスの軍拡・強硬外交が、第一次大戦の敗戦による平和意識をもつドイツ国民が不安に満ちた緊張感をもち、英仏の宥和政策で認められると、安堵の歓喜へ転換して支持を強めるというプロセスは大変興味深い。またポーランドをはじめとする東欧(最終的にはロシアまで)を植民地として認識し強制労働の対象としていた点は、大日本帝国とも近似しており(ある意味先行)、ナチス側がどのように見ていたのかも知りたいところ。もっともドイツ国民には形式的には高福祉を提供した点は(実際は高賃金も物資不足で貯蓄に回り、そのまま戦費に転用されたようだが)、かなり異なっているところか。独ソ不可侵条約ソ連は英仏の宥和政策に強い不信感を抱いていた)・独ソ戦のタイミング(ユダヤ人をソ連の北極沿岸の収容所送りを予定)などもわかりやすい。そうはいっても570万人のユダヤ人、20万人のシンティ・ロマ、100万人の非ユダヤポーランド民間人、280万人のソ連兵捕虜、300~400万人のソ連民間人が、戦闘行動以外で命を落としたというのは、やはり衝撃的。

第三帝国 ある独裁の歴史 ウルリヒ・ヘルベルト:一般書(電子版) | KADOKAWA 電車は多数の学生。こちらも月曜ははじまり、火・水は来週からだが、完全に集団的思考停止状態。ある意味でナチス支配下のドイツ人のようなものか・・・。