本日からひたすらレポート採点だが、昨日までの読みさしだけは処理しておく。19世紀末以降にアメリカでおきた消費資本主義に伴う「色彩革命」を背景に、食品着色ビジネスが成立、長距離輸送に向かなかった赤色バナナが淘汰され、あざやかな黄色こそがバナナの色され、オレンジはオレンジらしく着色され、バターとマーガリン(人造バター)は色をめぐって紛争になる。スーパーマーケットでは食品がパッケージされるため視覚こそがもっとも重要な情報とされる。一方どきつい着色料が問題にされるようになるとより自然らしくみえる色が注目され、ヴァーチャル世界の浸透がインスタ映えを生み出すようになるという、感覚論的転回が生み出した感覚史という試み。著者はそうした研究の最前線のアメリカで学位をとり、英文の博士論文(2019年にハーバード大出版会から刊行)をもとにした書物とのこと。文体も論文調だが研究史も記されこちらとしては有益だが、これからはこのように論文は英文で、新書のみが日本語で読めることになるのだろう。ただ常識的に予想できる展開で、あまり意外な発見はなかった。