wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

佐野静代『外来植物が変えた江戸時代』

本日は千里山2コマ、二週連続で設置PCがフリーズして時間配分がグダグダに、新しいはずだが何とかしてほしいところ。そんななかで読みさしの表題書を読了、気になっていて特別販売で購入したもの(それ以外に二冊目を通したがそちらは電車読書の対象外)。生糸・木綿・サツマイモ・サトウキビといった近世になって国産化された商品作物の施肥として、大量の藻類が採集されたため、水辺の冨栄養化を防いだたこと。それらのための薪炭林伐採ではげ山化が進行する一方で、砂が供給されたことで藻類の生育環境が維持されるとともに、植物性プランクトンを餌とするシジミ・ウニなどを生育させ、都市へと販売され、やはり冨栄養化を防いだという、予期せぬバランスによって里湖・里海と評価される環境が保全されていたとのこと。ただし琵琶湖・八郎潟浜名湖三河湾・瀬戸内海では人口増も含めてプラスに働いたのに対し、奄美では薩摩藩によるサトウキビ強制栽培・長期保存が困難なサツマイモ依存で島民にしばしば飢饉をもたらすことになったという。あとがきによると、もともと琵琶湖の水辺の研究者だった著者自身も研究開始当初は思いも寄らなかった結論だという。ただ本来のバックボーンである歴史地理学的な手法だけでなく、文献などあらゆる史料を活用したからこそ生み出された成果で、そのバイタリティーには感嘆するばかり。講義でも国産化は取り上げており、その副産物として早速活用させてもらうことにする。

外来植物が変えた江戸時代 - 株式会社 吉川弘文館 安政4年(1857)創業、歴史学中心の人文書出版社