wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

福島克彦『明智光秀』

本日はこの状況のなか所用で少しばかりお出かけ。ついでに新本屋に寄って積ん読が10冊を超えたこともあって、読みさしの表題書を読了して備忘を残しておく。当ブログで明らかなようにこのドラマにあわせた企画ものは一切手にしておらず、信長論もほとんど追いかけていない。ただ垣間見るところ一般に流布するイメージの行き過ぎた逆張りという印象を持っていた。それに対して本書は柴田勝家羽柴秀吉といった前線の武将とは異なり、安土の信長のもっとも近くにあって京都周辺地域の任された政権の司令塔と捉えて、政権の矛盾を浮かび上がらせている。司令塔という用語はあまり適切とは思えないのだが、統一的な領国支配方式を打ち出さずに結果のみを求める信長と、検地・軍法の制定など後につながるような地道な支配を進める光秀との矛盾の深まりが示されており説得的。もともと城郭史が専門だけあって、播磨制圧以後は姫路以外の城郭を破城にしていく秀吉と、丹波制圧後も盆地ごとに拠点城郭を建造する光秀との相違も興味深いところ。コビキAという瓦のタイプが文章だけで図面がない、せっかくの山崎合戦について新説を打ち出しているのに地図がないなど、一般向けとしては説明不足のところもみられるが(恐らく年度内刊行が優先されたヵ・・・)、良書と思えるもの。

明智光秀|新書|中央公論新社